オゾン水とは、オゾン(3つの酸素原子、分子式は O3 、常温常圧では気体)を水に溶解させたものです。
■ オゾン水の元となるオゾン
自然界のオゾン
自然界では地表に達した紫外線や落雷等で生成されます。
ご存知オゾン層は地上から約 15km ~ 30km 、成層圏に 10ppm ~ 20ppm の層を成し、太陽からの紫外線約 95% を吸収し我々を守っています。
低地では森林に多く存在し、海岸では強い日差しにより 0.1ppm ~ o.3ppm に達したという報告があります(作業環境基準上限が 0.1ppm )が、通常大気中には 0.005ppm 程度です。
光化学スモッグにもオゾンが含まれており、
環境省 大気汚染に係る環境基準
光化学オキシダント(OX)1時間値が 0.06ppm 以下であること。
光化学オキシダントとは、オゾン、パーオキシアセチルナイトレートその他の光化学反応により生成される酸化性物質(中性ヨウ化カリウム溶液からヨウ素を遊離するものに限り、二酸化窒素を除く。) をいう。
大気の状態がよくない都会では注意が必要です。
性質
沸点が -111.9℃ 、融点は -192.5℃ 、空気の 1.67倍 の重さ、酸素の 1.5倍 の重さです。
水への溶解度は酸素の 約10倍 ですが難溶の部類になります。
酸化力(物理的な殺菌力)はフッ素に次いで高く、オゾン で塩素の 約1.65倍 、オゾン水では 約7倍 です。
オゾンは不安定な気体で O3(オゾン) から O2 (酸素) へと自己分解します。
O3 × 2 = O × 2 + O2 × 2 = O2 × 3
一般的に常温の空気中では半減期が 10時間前後 、湿度が 50%以下 では殆ど殺菌力を示さず、 80%以上 が推奨されます。
活性炭で除去する方法もあります。(活性炭吸着分解法)
また、着色原因物質が有する不飽和二重結合を酸化分解し脱色します。
オゾンの殺菌機構
・微生物の殺菌
塩素は微生物の細胞壁を通過し、酵素が損傷を受けて死滅します。
メチシリンに代表される β-ラクタム系 の抗生物質は、細胞壁合成酵素の活性部位に結合して細胞壁合成をストップさせるという機能破壊です。
オゾンは微生物の細胞壁などの表層を構造的に破壊、あるいは分解することで酵素の活性が失われ、核酸が不活性化されるものと考えられています。
細胞表層のたんぱく質、または脂質を酸化しながら細胞壁などの機能を破壊、官能基(有機化合物特有の性質や反応を特長づける原子団や結合様式)と反応し中に侵入、酵素などを破壊します。
薬剤殺菌が一つの機能を破壊するのに対し、オゾンは構造破壊します。
オゾンの人体への影響
0.02~0.05ppm | オゾン臭を感じ取ることができる(自然界で発生する可能性のある濃度) |
---|---|
0.06ppm | オキシダント環境基準 |
0.08ppm | 不快感を感じる(頭痛等人体への影響あり) |
0.1ppm | 労働環境基準濃度(日本他アメリカ・ロシア等各国規制値) |
・0.01~0.02ppm
オゾンの臭気を感じる
・0.1ppm
鼻、のどの刺激
・0.2~0.5ppm
視力の低下
・0.4~0.5ppm
上部気道の刺激
・0.6~0.8ppm
胸 痛、せき
・1~2ppm
疲労感、頭痛、頭重、呼吸機能の変化
・5~10ppm
呼吸困難、脈拍増加
・50ppm 以上で生命の危険が起こる
独立生活法人 国民生活センター
平成 21 年 8 月 27 日
売れ筋の 7 銘柄のうち 5 銘柄で問題ありとの判断。また、水中に通したオゾンのほとんどは溶けずにそのまま空気中に放散されるため、室内のオゾン濃度が高くなり危険であったとの報告。
■ オゾン水の作り方
オゾンを水に溶解し過飽和にすることで濃度を高めます。
気泡溶解法(バブリング法)
オゾンを気泡にし水に溶解させます。
金魚鉢のブクブクと基本的には同じ構造です。
中空糸法
中空糸の壁の内外をそれぞれ純水とオゾンで満たし、中空糸壁を透過するオゾンが純水に溶解します。
水電気分解方式
水からできたオゾンをそのまま水へ溶解させます。
■ オゾン水の性質
常温常圧では半減期が 10分 ~ 60分 です。
オゾンと比較してオゾン水は殺菌効率に 約10倍 の優位性があります。
水温が上昇するとオゾンの酸化が促進され殺菌力が増しますが、溶解度が落ちます。
ph にも影響され、アルカリ性下でもオゾンの酸化が促進されますが、一般家庭等の使用環境下では手元に届く前に分解され濃度が落ちます。
特性として、二重結合等電子密度が高い部位をもつ化合物とは高速で反応しますが、飽和化合物との反応は遅くなり、酢酸とは実際上反応しません。
オゾンは水中で分解する際に中間体として OHラジカル (ヒドロキシルラジカル)や HO2 、 HO3ラジカル が生成されます。
OHラジカル はほとんどの有機化合物と高速で反応し、膜たんぱく質の酸化的変性、細胞膜脂質の酸化、細胞質成分の漏出、DNAを酸化的切断、無機化します。
遺伝子破壊が起こるため、耐性菌の自然発生について報告はありません。
■ オゾン水の安全性
□ オゾン水濃度 1.2ppm 、マウスを用いた反復経口投与毒性実験
7日間 連続経口投与試験について異常は認められない
研究報告
オゾン水の安全性評価に関する研究
藤井隆也、鈴木功、江副創、坂崎文俊、奥野智史、上野仁、中室克彦
トヨタ車体株式会社 新規事業部、摂南大学薬学部
日本医療・環境オゾン研究会会報 Vol.14 , No.1 , 3-8 . (2007)
□ オゾン水濃度 1.2ppm 、ハムスターを用いた口腔粘膜刺激性試験
肉眼的所見は オゾン水 < 水道水 < 次亜塩素酸ナトリウム の順に刺激性が強いことを示した
病理学的所見は水道水と同様に異常がなく有意な差を認められない
研究報告
オゾン水の安全性評価に関する研究
藤井隆也、鈴木功、江副創、坂崎文俊、奥野智史、上野仁、中室克彦
トヨタ車体株式会社 新規事業部、摂南大学薬学部
日本医療・環境オゾン研究会会報 Vol.14 , No.1 , 3-8 . (2007)
□ 家兎に対しオゾン水濃度 20ppm の急性毒性試験、オゾン水濃度 4ppm の亜急性毒性試験
角膜、肺、胃粘膜、筋肉、肝臓、腎臓、心臓等に肉眼的、組織学的な変化は認められない
オゾン水の歯周病原細菌に対する殺菌効果および細胞傷害性に関する研究
辻上 弘
神奈川歯科大学歯周病学講座
日歯 周誌44 (1) : 46-54, 2002
■ オゾン水の効果
細菌不活性化実証試験結果
埼玉県産業技術総合センター北部研究所
菌種 | 接種菌数 | 生菌数 | 死滅率 |
大腸菌 Escherichia coli NBRC 102203T | 1.4×106 | 65 | 99.995 |
ブドウ球菌 Salmonella enterica subsp. enterica NBRC 13245T |
1.9×106 | 47 | 99.998 |
緑濃菌 Pseudomonas aeruginosa NBRC 12689T |
1.2×106 | 11 | 99.999 |
殺菌効果実証試験方法:メンブレンフィルター法
滅菌したメンブランフィルターホルダー(アドバンテック東洋(株))に孔径0.45μm、直径47mm のセルロース混合エステル製滅菌済みメンブレンフィルター(アドバンテック東洋(株))を装着。
オゾン水 1ppm を 100mL 採水、1分後に菌体溶液を添加。
さらに10秒後 0.1Nチオ硫酸ナトリウム溶液 を 1/10 量加えた。
この試料を上記メンブランフィルターホルダーに注ぎ濾過。
濾過後 約100mL の希釈液を注ぎ、同様に濾過してホルダーを洗浄。
濾過終了後メンブランフィルターを標準寒天培地(栄研化学(株))表面に移し、35℃ にて 24時間 培養。
生じた集落数から 細菌数(CFU) を算出。
引用 石川金属機工
99%不活性化の濃度時間積比較(mg・min/L)
殺菌剤 | 腸内細菌 | ウイルス | 芽胞菌 | アメーバ |
オゾン水 | 0.01 | 1 | 2 | 10 |
次亜塩素酸 | 0.2 | 5 | 100 | 100 |
次亜塩素酸イオン | 20 | >200 | >10000 | 1000 |
モノクロラミン | 50 | 1000 | 5000 | 200 |
濃度1ppm オゾン水 へ 5秒間 接触、24時間 培養後の比較写真
北里大学
引用 石川金属機工
オゾン水の各種病原微生物に対する殺菌効果の検討
北里大学医学部皮膚科学、北里大学大学院医療系研究科
環境皮膚科学 講師 藤村響男
濃度1ppm の オゾン水、接触時間 5秒 で殺菌できることが確定した菌
大腸菌 | Escherichia coli ATCC25922 | DSC00125 |
病原大腸菌 | Escherichia coli O-111 | DSC00125 |
黄色ブドウ球菌 | Staphlococcus aureus ATCC25923 | DSC00111 |
サルモネラ菌 | Salmonella typimurium | IMG0057 |
アクネ菌 | Propionibacterium acnes | DSC00274 |
赤痢菌 | Sigella flexneri | IMG0413 |
腸炎ビブリオ菌 | Vibrio Parahaemolyticus | IMG0430 |
リステリア菌 | Listeria monocytogenes EGD | IMG0442, IMG0446 |
緑膿菌 | Pseudomonas aeruginosa | IMG0408 |
エンテロコッカス | Enterococcus faecalis | IMG0483, 0484 |
表皮ブドウ球菌 | Staphylococcus epidermidis | |
セラチア菌 | Serratia marcescens | IMG0479, 0480 |
カンピロバクター菌 | Campylobacter jejuni | IMG0494 |
ミュータンス菌 | Streptococcus mutans | IMG0649 |
白癬菌 | Trichophyton rubrum | IMG0589 |
※ 殺菌はできるが、接触時間等検討中の菌
Mycobacterium chelonae、Mycobacterium marinum( 非結核性抗酸菌 )
歯科分野
HGEs ( 歯肉上皮細胞 ) 浮遊細胞 は、1ppm のオゾン水処理により付着細胞率の増加傾向が認められた。
低濃度のオゾン あるいは オゾン処理 による産生物が、HGEs の付着活性を促進した可能性があるものと考えられる。
オゾン水の歯周病原細菌に対する殺菌効果および細胞傷害性に関する研究
辻上 弘
神奈川歯科大学歯周病学講座
日歯 周誌44 (1) : 46-54, 2002
現在、一般に用いられている含嗽剤等、ほとんどすべての消毒薬に関して、細胞傷害性等の副作用が報告されている。
本研究において、細胞外基質により保護された平面培養細胞に対する、オゾン水の傷害性は軽微で、DMEM (ダルベッコ改変イーグル培地) 中の浮遊細胞においても、血清成分等により傷害作用はほとんど認められなかった。
また、オゾン水は歯周病原細菌( 口腔偏性嫌気性細菌 グラム陰性桿菌 ) である Porphyromonas gingivalis 、Prevotella intermedia 、 Fusobacterium nucleatum に対して殺菌効果を示した。
さらにオゾン水は 歯肉縁下プラーク構成菌 に対して作用時間 30秒 で殺菌効果を示し、その効果は 1ppm から濃度依存的に増加して認められた。
口腔内においても、オゾンによる殺菌効果が期待され、歯周組織由来細胞は細胞外基質により保護されるものと考えられる。
これらのことから、今後の歯周治療におけるオゾン水の有用性が示唆される。
オゾン水の歯周病原細菌に対する殺菌効果および細胞傷害性に関する研究
辻上 弘
神奈川歯科大学歯周病学講座
日歯 周誌44 (1) : 46-54, 2002
農業分野
植物を用いた研究において、低濃度のオゾンは成長の促進等、その活性を増加させると報告されている。
オゾン水の歯周病原細菌に対する殺菌効果および細胞傷害性に関する研究
辻上 弘
神奈川歯科大学歯周病学講座
日歯 周誌44 (1) : 46-54, 2002
オゾン水は植物病原菌に対して高い殺菌効果を有し、 1ppm の濃度で Burlholderia glumae (イネもみ枯細菌病菌) 、 Ralstonia solanacearum (青枯病菌) の菌体、 Pythium aphanidermatum (ピシウム立枯病) の遊走子を、3ppm で Botrytis cinerea (灰色かび病) 、 Tricoderma viride (トリコデルマ) の分生子を 1分以内 に殺菌できる
オゾン水中で減圧処理後、 1ppm のオゾン水で 15分間 かけ流し処理することで、水稲種子表面の微生物数を 104 cfu /g 以下に、さらに、 5ppm では、 105 個以上の密度を減少させることができる
水稲トリコデルマ苗立枯病菌 (種もみ接種) および もみ枯細菌病 の接種もみ(種もみ接種:減圧処理)を 5ppm のオゾン水で 15分間 かけ流し処理したところ、いずれも発病が抑制される
オゾン水中で減圧処理し、 5ppm のオゾン水を 15分間 かけ流し処理した水稲種子について、発芽に影響が認められない
オゾン水生成装置とオゾン水による微生物制御3<農産種子及び農業資材のオゾン水による殺菌効果>
草刈眞一、岡田清嗣、瓦谷光男
防菌防黴誌、26巻、No.12、61-68、1998.
内生胞子よりも細胞膜が厚い厚膜胞子に対するオゾン水の殺菌効果については、1万個 のコロニーに対して, 0.4 〜 0.6ppm で無処理区に対し有意差があり、 0.6ppm で完全に死滅させ得る。
トマト葉かび病菌 (空気伝染性) の分生胞子に対するオゾン水噴霧による殺菌効果については、0.2ppm 以上で殺菌効果があり、0.5ppm で死滅させ得た。
オゾン水噴霧時の植物体に対するオゾン耐性については、2.0ppm 以下の噴霧では、トマトの場合は、茎葉表面に細毛があり、はつ水性を示すため全く影響を与えない。
従って、オゾン水噴霧防除 は、すでに細胞内に浸入し感染した場合は殺菌因難であるが、病気の予防や蔓延の防止には有効と考えられる。
栽培施設・植物工場における新防除殺菌システム
千葉大学 松尾 昌樹
農業機械学会誌
■ オゾン水の利用状況
水道水
オゾンによる水処理 | 水源・水質 | 東京都水道局
東京都水道局で導入を進めている高度浄水処理は、オゾン処理に生物活性炭処理を組み合わせたもので、有機物やかび臭物質、アンモニア態窒素の除去に大きな効果があります。
オゾン水処理のみでは原水中の 2~3倍 程度の アルデヒド 、 ケトン 、 カルボン酸 などの ノンハロゲン系消毒副生成物 が生成されるデータもあり、生物活性炭処理が合わせて行われています。
オゾンは食品既存添加物です。
公益財団法人 日本食品化学研究振興財団 既存添加物名簿収載品目リスト
既存添加物とは?
わが国において広く使用されており、長い食経験があるものは、例外的に使用、販売等が認められており、既存添加物名簿に収載されています。
この類型は、平成7年の食品衛生法改正により、指定の対象が、化学的合成品から、天然物を含む全ての添加物に拡大された際に設けられました。【厚生労働省】
医療機器
手洗い機や内視鏡の消毒器などが厚生労働省の認可を得ています。
民間利用
病院、デパート、鉄道、水産加工場、食品工場、製薬工場、飲食店、化粧品工場、プール、温泉等。